2018年03月21日

今月の掲示板 2018年3月



(芥川賞 若竹千佐子 著『おら おら おらでいぐも』より)

  知らないごとが分かるのが
  一番、おもしぇいごと

  この痛み
  生きているからごそだおん

  人生は、
  言ってみれば失って得た人生なのだぁ
  失わなければ
  何一つ 気づけなかった

  死は 
  恐れではなく 解放なんだ なす

  笑いは、こみ上げる意欲だ

  自分に対する好奇心
  これを十分に探求し味わい尽くすのが
  この先 最も
  興味津々なこと

  死は
  あっちゃにあるのでなぐ
  おらのすぐそばに
  息をひそめて待ってるのだず

  生ぎで死んで 生ぎで死んで
  生ぎで死んで 生ぎで死んで
  生ぎで 気の遠くなるような長い時間を
  つないで つないで つないで つないで
  つないで つなぎにつないで
  今 おらがいる
  そうまでしてつないだ だいじな命だ
  おらはちゃんと 生きだべか

  右手に伝わる左手の温かみ
  左手が感じる右手の手応え
  それがほら
  あちら側からの励ましに受け取れて
  深く痛み入る

  まぶしい
  みな光り輝いている
  何事も
  ここを先途だと思えば
  何もかも違ってみえた

  おめはただそこにある 何もしない
  ただまぶるだけ 見守るだけ
  それがうれしい
  それでおらは おめを信頼する
  おらの生ぎるのは おらの裁量に任せられているのだなぁ
  おらは おらの人生を引き受ける
  そして 大元で おめに委ねる
  引き受けること 委ねること
  この二つの対立で成り立っている

  

Posted by 守綱寺 at 20:00Comments(0)今月の掲示板