2019年02月23日

本堂に座って 2019年1月



そろばん・習字・ピアノと習いごと三昧で過ごしてきた在ちゃんでしたが、この冬、1級合格を機にそろばんを卒業することになりました。
習いごとの中でもそろばんは週3日通っていたので、そろばんを卒業できることは在ちゃんにとって(送迎する僕らにとっても)大きな肩の荷が下りた感があります。
時間に余裕ができる在ちゃんは、「これでやっと友達といっぱい遊べる!」と期待に胸を膨らませているのですが、そんな在ちゃんに対して、親の(勝手な)願望が沸々と沸き起こってしまいます。
開くん・誓くんは読書好きで、暇があれば(暇じゃなくても?)本を開いている子たちなのですが、何かと忙しかった在ちゃんは、本好きではあるもののじっくり読書にふけることがなかったように思えてしまうのです。
「せっかく時間ができるんだから、在ちゃんの読書時間を増やそう!」という親の勝手な願望を、いかに自然に(!?)在ちゃんに向けていこうか…と考え出した矢先、ネット上で「昔、娘と一緒に読んだ懐かしい本」と紹介されているのを見つけて、「これだ!!」と思う書籍に出会いました。
そのタイトルは『アリーテ姫の冒険』。内容よりも何よりもタイトルに打たれました。
在ちゃんに勧めるにはもってこいの本です(短絡的過ぎますが…)。
さっそく図書館で本を借りてきたのですが、この本、とても面白くて読みやすい内容というだけでなく、実はとても深い思い・願いの込められたものだということがわかってきました。
本の内容について適確にまとめられているコラムを引用させていただき、お話を紹介します。

お話の魅力はヒロインのアリーテ姫が読書家で賢く、前向きで得意分野を生かして難関を次々突破していくところ。
姫を殺そうとたくらむ魔法使いとその家来の意地悪さが巧みに描かれているため、姫が彼らをぎゃふんと言わせるたびに、子どもはもちろん、読んでいる私もすっきりした気分になります。
お姫様に王子様、良い魔法使いに悪い魔法使い、ヒキガエル、蛇、ネズミ、馬、そして不思議な宝石や水など、おとぎ話の要素をふんだんに盛り込みつつ、一般的なお姫様物語とは逆の世界観を提示していることに、大人はすぐに気づくでしょう。
ヒロインのアリーテ姫が闘う相手は、意地悪な魔法使いや娘に無関心な王に象徴される「女性差別社会」です。
読書好きでお城にあった本を片端から読破してしまい、賢くなって自分の意見を堂々と述べるアリーテ姫に、家庭教師は怒ります。
なぜなら家庭教師は、お姫さまは自分の意見を言うべきではない、と考えているからです。
王様は財産を増やすことに執心し、アリーテ姫がお金持ちの王子と結婚することにしか興味がありません。
挙句の果てに宝石と引き換えに娘を悪い魔法使いと結婚させてしまいました。
面白いのはアリーテ姫が、父親と結婚相手から酷い目に遭わされても、泣くことも落ち込むこともせず、前向きに物事にあたり、日々を楽しみつつ、欲しいものを手に入れていく描写です。
彼女は賢いがゆえに「結婚できない」と人格を否定する親や、劣悪な環境に彼女を閉じ込め、難題を与えて殺す口実を探す魔法使いなど、気にもしません。
現実の世界では、このような目に遭えば自己肯定感が下がったり、何もやる気が起きなかったり、もしくは自分の境遇を嘆いて暮らすことが多いはずです。そこをあえて反転させ、あくまで前向きに生きて最後は自らの手で幸せを勝ち取るお姫さまを描いたところに、この物語の価値があります。
そうです。この物語はひどい現実を目の当たりにした時、あきらめ、希望を失いかける私たちに前に進む勇気をくれるのです。
(「賢いお姫様の物語『アリーテ姫の冒険』。児童文学のベストセラーを日本に絶望しそうな大人が、読むべき理由」治部れんげさんのコラムより引用しました。)

悪い魔法使いがアリーテ姫に3つの難問を持ちかけると知り、姫を助ける良い魔法使いのおばあさんは“3つの願いを叶えられる魔法の指輪”を姫に渡します。
ところが姫は、この指輪を難問を解決するためには使いませんでした。
姫にとっていちばんつらくて危険なことは、なにもすることがない“退屈”で、その解決のため、自分の生活を楽しく素敵にするために指輪を使ったのでした。
この本は30年ほど前に女性差別社会の視点から書かれたものですが、物語を読み進めていくにつれて、差別の根本は女性問題に限らず共通のものがあるんじゃないか…と感じました。   
(在ちゃんはこの本をとても気に入ってくれました。)
  

Posted by 守綱寺 at 20:00Comments(0)本堂に座って