2019年01月04日

お庫裡から 2018年10月

お庫裡から 2018年10月

時々、「ご朱印をください」と来られる方があります。うちは、浄土真宗、大谷派、東本願寺の末寺でご朱印はしていません。
が、守綱寺にお参り下さった印として、日付・寺名を書かせていただきます。
その日、50代と思われる女性が朱印を求めて来られました。
ご朱印帳に「南無阿弥陀仏」「あなたはあなたに成ればいい。あなたはあなたで在ればいい(釈尊)」「守綱寺」と書いて、お渡しする時その方の様子が気になり「少しお話していかれませんか」と座ぶとんをすすめました。
話しては涙、ふいては涙、涙、涙の会話から聞き取れたことは、下宿して、大学浪人中の20歳の息子の「こんなに苦しいなら、死んだ方がましか」と発した言葉に、母親なのに「そうだね」と言ってしまった。
「私の言葉で、もし息子が死んでしまったらどうしよう」と、ご朱印をもらい歩かれる、その方の事情もわかってきました。
「息子さんが生まれた時、嬉しかったですか」
「はい、それはもう」
「成長する息子さんが生きる励みになっていませんか」
「はい。小さい時は本当にいい子で」
「評価ではなく、息子さんがいてくれた、そのことは」
「私の張り合いでした」
「じゃあ、息子さんにそれを伝えて下さい」
「今、息子は自分の用件のみ、一方的に言うだけで、私の言うことを聞きません」
「じゃあ、手紙は」
「読まないかもしれない」
「一度も書かないうちから決めつけないで。息子さんに、あなたが生まれてくれて嬉しかった。あなたの存在が私の張り合いだったと、20年間伝えてないのでしょ。息子さんの生きているうちに、そして、あなたの生きているうちに、そのことを伝えなくて、いつ伝えるの。何度でも、何度でも、読んでもらえるまで書き続けて下さい。それは、ご朱印より先決では」
「そうですね、やってみます」
と重い腰を上げ、少し微笑んだその方に、
「心がいっぱいいっぱいになったら、また、話しに来て下さい」
と声をかけ、見送りました。

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Posted by 守綱寺 at 15:47│Comments(0)お庫裡から
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