2019年01月04日

清風 2018年12月

清風 2018年12月

当流上人の御勧化の信心の一途は、つみの軽重をいわず、また妄念妄執のこころのやまずなんどいう機のあつかいをさしおきて、ただ在家止住のやからは一向にもろもろの雑行雑修のわろき執心をすて、弥陀如来の悲願に帰し、一心にうたがいなくたのむこころの一念おこるとき、すみやかに弥陀如来光明をはなちてそのひとを摂取したもうなり。
これすなわち、仏のかたよりたすけましますこころなり。またこれ、信心を如来よりあたえたもうというもこのこころなり。
されば、このうえには、たとえ名号をとなうるとも、仏たすけたまえとはおもうべからず、ただ弥陀をたのむこころの一念の信心によりて、やすく御たすけあることのかたじけなさのあまり、弥陀如来の御たすけありたる御恩を報じたてまつる念仏なりとこころうべきなり。
これまことの専修念仏の行者なり。これまた、当流にたつるところの一念発起平常業成ともうすも、このこころなり。あなかしこ。

本願寺8代留守職 蓮如上人作(寛正2年(1461年)蓮如上人47歳)
帖外御文 … 五帖に編集したものからもれたものが   
「帖外御文」として編集されたものと伝わる。


この「お文」で注目させられるのは、波線の部分ではないでしょうか。

親鸞聖人の言葉としては「ただ“念仏して弥陀にたすけられまいらすべしとよきひとのおおせを蒙(こうむ)りて”信ずるほかに別の子細なきなり。」(『歎異抄』第2章)と伝えられています。

上記、蓮如上人の「ただ弥陀をたのむこころの一念の信心によりて、やすく御たすけあることのかたじけなさのあまり」の文意が分かりにくいのではないでしょうか。
この文章に「やすく御たすけあることのかたじけなさ」と言われている、その「たすかる」という言葉の意味が、現代を生きる私どもには分かってしまっているのではないかと思うのです。
この場合の「たすかる」こととは、私の目の前の状況が自分の都合のいいように成ることでしょう。例えば、風邪を患っている人なら、風邪が治る…というように。

宗教といえば「たすかること」、あるいは「たすけてほしい」と願う行為と考えられているのではないでしょうか。
この御文で「このうえには、たとえ名号をとなうるとも、仏たすけたまえ(①)とはおもうべからず、ただ弥陀をたのむこころの一念の信心によりて、やすく御たすけ(②)あるかたじけなさ」とあるうち、①でいう「たすけ」と②でいわれる「たすけ」が同じなのか違うのか、同じだとすれば重複して使われている意味は何なのか、また違うなら①と②はどう違うのか、それぞれ明らかにしなければならないでしょう。

このことは、83歳男性の新聞への投書にあった「長生きはめでたいことなのか」という心配にも表れているように思わされました。
長生きは、人類が願ってきた大きな共通の願望と言えるでしょう。
しかしこの男性は83歳を過ぎて、少子高齢化対策が取り沙汰されていますが、「高齢化対策は、もっぱら、いかに支えて長生きさせるかという観点からの対策です。
これでいいのでしょうか。私も介護を受けて寝たきりになり、排泄もままならない日がくるかもしれません。
その時、そんな状態で生き長らえたくはありません。介護を拒否し、安楽になることを願います。しかし、自分で安楽になることはできません。
社会が措置してくれることを願います。これは多くの高齢者の願いではないでしょうか。皆さんは、どうお考えでしょうか。」と。
要するに、安楽死・尊厳死を社会が許容する、そういう制度の整備をして欲しいということが、この男性の願望のようです。

科学(ここでは医学と医療技術)の発達は、今や過剰な延命治療を可能にし、自然で静かな最後を拒むようになった、と言われているようです。
長生きが達成されたその時、長生きを実現した高齢者が安楽死・尊厳死を願っている…。
これが、望んできたことが実現したときにぶち当たった鉄壁でした。
思いどおりになった時、自分の身体が私の思い通りにならないという事態に直面しなければならなくなったわけです。

さて、上に挙げた①と②の「たすけ」という言葉を大切にして、仏教でいう「たすかる」について、この男性の訴えをどういう視点から考えようとしたかを、次号で明らかにできたらと思います。


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Posted by 守綱寺 at 16:13│Comments(0)清風
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