2019年05月19日

清風 2019年4月

清風 2019年4月

にんじん(人参)よりは、
だいこん(大根)がいい

人身(にんじん)受け難し、今すでに受く
(「三帰依文」冒頭の言葉)を聴いた、幼児の発言




お勤めの前には「三帰依文」を読むのですが、寺では家族が揃いやすい夕食の前に夕時勤行をすることにしています。
孫の在ちゃんが、まだ保育園入園前後の頃だったと思います。
「三帰依文」の最初の言葉「人身受け難し、いますでに受く」の「人身」を「にんじん」と詠み慣わしていますので、いつものように「にんじんうけがたし…」と読み、終わったところで在ちゃんが「おじいちゃん、にんじんは苦いし臭いも好きじゃないから、私は大根がいい」と言いました。

仏教の言葉は、中国の呉の時代の読み方をすることがあります。今の日本では
ふつう「人身」は「じんしん」と読みますが、三帰依文の読み上げは、仏教の伝
統的な読み方 ― 呉音読みで「にんじんうけがたし…」と詠み慣わしています。

その時は、その在ちゃんからの「異議申し立て」に可愛いな…と思ったぐらいに聞き流していたのですが(在ちゃんもこの4月から6年生です)、先日あるところでの法話にうかがって、この「にんじんよりは、大根がいい」という発言を紹介しながら、初めて何気なく「大根」と板書しました。
話としてはこれまでにも紹介していましたが板書したのは初めてで、「大根」と書いてみてあらためて気付いたことがありました。
それは、大根の「根」の字についてです。
『大辞典』には、「根本原理、根本となり動かすべからざる原理」
『広辞苑』には、「根、よりどころ。物事のもと」
などの意が出ていました。
「大根(だいこん)」は、「大きい」というか「深い」というか、そういうメッセージの込められた言葉であるということです。
「根」そのものが、そういう意味を持つのでしょうが、それにたまたま「大」の字が付いて「大根」と。

考えてみると、どうでしょうか。
私ども、人間の生きているという営みは、要するに一言で言えば、言葉そのものの表現している「大根(根本となるよりどころ)」を求めて…ということになるのではないでしょうか。
いわゆる、人間の営みの集積である歴史というものは、洋の東西を問わず、大根(根本となるよりどころ)を求めてきた歩み(=歴史)と言えるのではないかと思うのです。
人間の歩み(歴史)とは、本当に安らげる ― 不安・不平・不満の無い、過去には感謝・現在には満足・未来には希望を持てる ― 社会・国を求めてきたのです。過去の先人達も、結果(というか評価)は様々に分かれるでしょうが、その時代にあっては「自分の国を愛するのに、どうして他人の国を憎まねばならぬ必要があろうか」〔中野重治 作家〕との発言もあるのですが、結局は治安維持法などで、そういう発言は認められず、愛国という(正義の?)旗印を立てて“鬼畜米英”という結果になって、殺し合いをしてしまいました。

「私には、敵は いない」(劉暁波(リュウ・シャオ・ポー) 1949年~2017年 2010年ノーベル平和賞受賞)この言葉はリュウ氏の遺言として一考しなければならないのでしょう。

次に安田理深(1900年~1982年 思想家)は、師・曽我量深のその生涯にわたる念仏についての思索を、「念仏の仏教を、単なる救済でなく、自覚自証の途としてみなおしてくるところに革命的な意義がある。」と言い、「よく考えれば、宗教を救済としてのみ見るのは、人間の自己肯定である。」、それなら「根元的意味でのエゴイズムである。それを破って、人間をして深い根元に呼びかえす、自覚こそ宗教の本質でなくてはならぬ。」(『清風』2018年11月号1面の言葉参照)と述べています。

さてあなたは、生きる上で何を「大根(根本のよりどころ)」として生きていますか? 
これらの先人のご苦労を手引きとして、上に掲げた問題意識(「大根」)を考えていきたいと思います。
4月14日(日)午後1時開演、花まつり チャリティ 筍コンサート。
皆さま、どうぞお出かけください。

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Posted by 守綱寺 at 20:00│Comments(0)本堂に座って清風
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