2019年05月19日

清風 2019年5月

清風 2019年5月

人間とは   
その知恵ゆえに
まことに深い闇を生きている

高史明(コ・サミョン) 作家
1932年下関生まれ、在日朝鮮人2世。高等小学校中退。
親鸞聖人の教えに縁を結ばれる。
著書『念仏往生の大地に生きる』『真実のいのちに導かれて』
(いずれも東本願寺出版部発行)他多数

私ども人間は他の生き物とは異なり、意識・理性を備えています。
その知恵のおかげで、いわゆる進歩・進化を遂げてきました。
しかし、その進歩・進化は、逆に退化と呼ばれるような様相を帯びつつあることが、知られるようになってきました。
例えば地球温暖化と言われるように、人間のエネルギー消費が、他の生き物が持続して生息するのに困難とされる地球環境の破壊をもたらし、その原因とされるCO2の排出量を減らすという施策を行い、特にGNP(国民総生産)の高い国に対しては達成目標数値を示す事態となっています。

先月号では「人身受け難し」という三帰依文の冒頭に置かれている言葉を紹介しながら、人身(野菜の人参、そして大根)という幼児の言語感覚に教えられて、私たちは何を生きる上での大根(根本のよりどころ)として生きようとしているかを考えてみました。

仏教の基本的な教えを語る言葉としての「縁起(因縁生起)」、それをもう少し説明している「重々無尽 法界縁起」という言葉をご存知でしょうか。
「重々無尽」とは互いに関係し合って際限の無いこと、また「法界縁起」とはあらゆるものが互いに縁となって現れ起こっている、という意味とされています。
こんなことを語られている本に出会いました。
普通、日常的な時間と神話的な時間があって、その片方の日常的時間だけを思っているときもある。
「早く早く、ご飯を食べないと遅れるわよ」と言ったときに、その時のお母さんの考えは日常的な時間で、これは神話的時間ではない。
それにせかされている子どもも神話的な時間ではない時間を生きていることになります。
東京で調査したところが、子どもがお母さんから聞くことばの中で多いことばは、「はやく、はやく」だそうですよ。
「はやく、はやく」って、これは神話的時間じゃないんで
これは近代的時間です。能率的なその瞬間の中で生涯を過ごすとどうなんですか。
五十年、六十年生きていても、早く早くで生涯終わってしまったらどうなんでしょうね。
文学にも何にも縁がないですよ。
『神話的時間』熊本子どもの本研究会刊 1998年1月9刷
鶴見俊輔(1922~2015年)
ハーバード大学で哲学するということ、「生きるとは思索する、考えるということ」であることと学ぶ。
1946年、雑誌『思想の科学』創刊の中核を担う。
ベ平連などの社会運動にも参加。

そこで「根本的なよりどころ」を考えるヒントとして、冒頭の高史明さんの言葉と、上記の鶴見さんの『神話的時間』の一節を紹介しました。
これらの言葉を紹介するのは、「清風」昨年11月号1面で紹介した安田理深先生の言葉、「念仏の仏教を、単なる救済ではなく、自覚自証の途としてみなおしてくるところに、曽我先生の思索、学びの)革命的な意味がある。
(略)人間をして深い根元に呼びかえす、自覚こそ宗教の本質でなくてはならぬ。しかもその自覚は理知的というよりも、根元の深みへ呼びかえし目覚ますという意味での自覚である。」に、実は導かれてのことなのです。

冒頭の高史明さんの「人間とは、その知恵ゆえに、まことに深い闇を生きている」という指摘は、私たち人間にとっての“大根”とは、自己の他に求められることではなく、私の知恵・理性の底(根っこ、内観するその気づき)にこそあるのだと見出したのが仏教(佛陀の教え、目覚め・気づきの教え)であったからです。

仏教の「救い」とは、これから努力して実現する次元のことではなく、すでに救いのド真ん中にいるのにそれに気づけない私である、という目覚めから出発することであったのです。親鸞聖人の言われる「難信」も、そういう意味であるのです。
私の知恵・分別こそが、私を救いから遠ざけていたのです。だから「ただ念仏」の教えは「難信」と言われてきたのです。
「苦悩する」というのは、既に与えられているからこそ、生じるのです。


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