2023年12月26日

清風 2023年10月

清風 2023年10月


私が言っている「脱成長」というのは、仏教的な考えで言えば「足るを知る」という、単純な話です。
「人新世(ひと―しんせい)という時代」 斉藤幸平

註)『サンガ』隔月刊誌
    (180号 P2~P3 2022年11月発行 東本願寺真宗会館刊)
斉藤孝平 1994年生まれ、経済学者。
『人新世の「資本論」』(集英社新書 2020年発行)がベストセラーに

「人新世」とは、時代区分を表す地質学の言葉である。
人類が地球の地質や生態系に与えた影響に注目して付けられた名前を、斉藤さんは「人類が地球を破壊しつくす時代」と捉える。
はたして人類は生き延びることができるのだろうか。

斉藤さんは「現代社会は成長をあきらめきれるでしょうか?」という問いに対し、有限の地球環境で無限の経済成長は出来ないという当たり前の現実を受け止めるべきだ。
この間、成長をめざした必死の改革で格差は拡大し、幸福度は下がった。
そもそも私たちが生きていくために不可欠な、教育や介護、保育のようなエッセンシャル(生きる上で誰もがお世話にならなければならない)分野で利潤を求める必要はない。
成長を前提にせずに、人々の基本的なニーズ(必要)は満たされる社会を構想する必要がある。
(「朝日新聞」2022年6月19日付「環境と成長 両立できる?」の紙面にて)と答えている。

仏教では、今の世を末法と、時代状況を五濁(ごじょく)の世と名付けている。
五濁 … 五つのにごり。劫濁・見濁・煩悩濁・衆生濁・寿命濁をさす。
見濁 … 人々が誤った思想・見解を持つようになること。
誤った思想・見解 ― 人間の欲望は無限である。それなのに、有限の地球
              環境で無限の経済成長が可能であるとする立場。

ダーウィンの「進化論」により、人間は生きものの中で一番進化した動物であると位置づけする見解が生まれ、人間を「万物の霊長」と表現した。
人間もその中で生まれ育てられてきた環境である自然を、人間のための資源としてのみとらえる考え方がされるようになった。(母胎を資源とする…現代人の思考?)
「濁」というのは、濁っていることであり、対象が人間の持つ意識で解釈されて、ぼんやりとしか受け止められなくなるということ。

「清風」2022年9月号の巻頭言で、「人間の本質はGNP(国民総生産額)によって計られうるものではない」(『人間復興の経済』E・F・シュマッハー著 1976年第1刷発行 佑学社刊 P14)と記している。
その本のP28下段L2から、
人間が必要とするものは無限であり、その無限性は精神的領域においてのみ達成でき、物質の領域では決して達成出来ない。
人間はこの単調な“世の中”で身を処する以外にない。英知がその道を教えてくれる。
その英知がなければ、彼は世の中を破壊するお化けのような経済を作り上げることに駆り立てられ、まるで月に着陸するようなすばらしい満足を求めてやまない。
(略)富と権力と科学、あるいは考えられる限りの“競技”に卓越することによってそれを克服しようとする。

これらが、戦争の真因であり、最初にそれらを取り除くことなく平和の基礎を作ろうと試みることは空想的である。
ではどうするか。
まさに人間を紛争に駆り立てる力、すなわち貪欲と妬みの組織的な助長に依存する経済的基盤の上に平和を築こうとすることは疑いもなく空想的である。
我々はいかにして貪欲と妬みの武装解除を始めることができるか。
(略)人々は、貪欲、妬み、そして自分自身の内部の抑え難い欲望を克服する力をどこで発見できるのだろうか。

そこでシュマッハーはガンジーがその答えを当ててくれると記している。

私は日本人として、仏教、ことに浄土教の教えの伝統に連なる者として、その解を親鸞聖人、近くは明治初期に出られた清沢満之師(1863~1903)にご縁を得られた方々から、学びを深めていきたいと思う。

11月号から、既に2022年5月号に紹介している日記(『臘扇記』清沢満之著)の「万有の進化」で始まる文章などにより、特に「その無限性は精神的領域においてのみ達成できる」について、学んでゆくことにする。  
(この稿続く)


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Posted by 守綱寺 at 09:59│Comments(0)清風
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