2018年02月07日

本堂に座って 2017年12月


本堂に座って 2017年12月




先々月まで数回にわたって西野亮廣さんの本を紹介しましたが、その間に新しい本が出版されました。
ビジネス書に分類される本ですが、読んでいくとやっぱりその視点の面白さに目が留まります。今回は老いることについて、です。

医療制度を充実させ、国民皆保険制度を整備し、ありとあらゆる方法で、僕らは見事に寿命を延ばしたわけだが、巷では「アンチエイジング」という言葉が踊り、歳を重ねることをネガティブに捉えるきらいがある。
歳を重ねることをネガティブに捉えてしまうと、寿命を延ばすことは、つまり「ツライ時間を延ばす」ということではないか。
何故、努力を重ねてツライ時間を延ばす必要があるのだろう。
何故、「アンチエイジング」という言葉が横行するのか?何故、人は若さを求めるのか?
理由は1つ。老人のアドバンテージ(優位性)を提示できていないからだ。
体力は落ちるし、腰は曲がる。肌のハリはなくなるし、頭髪もなくなる。
どこを切り取っても失うものばかりだ。
だから、そこに抗おうとする。
ただ、泣いても笑っても、僕らの寿命は延びたわけだ。
抗っても仕方がない。
こうなりゃ老人のアドバンテージを見つけ出し、「早く老人になりてーなー」というところまで意識を持っていくしかない。
100歳時代の僕達が幸せに生きていく為にやらなければならないことは、「アンチエイジング」を推奨することではない。
歳を重ねることを、「衰え」ではなく「成長」にすることだ。
その答えを探すことだ。
これは極めて重要な課題だ。会社勤めなら60歳で定年退職して、それから僕らは30~40年も生きることになる。
仕事を始めてから定年退職するまでと同じくらいの時間が、定年退職後に残っている。
間違いなく僕らは、60歳から新たな仕事を探さなければならない。
ムチャクチャ雑に説明すると、「20歳から60歳までの仕事」と「60歳から100歳までの仕事」。
僕らはこの人生において、前半と後半で2つの仕事をやらなければならない。
その時に若い人間にはない「老人のアドバンテージ」をキチンと提示できていないと、人生の後半において仕事にありつけない。
若い人間にはない、ロボットにもない、老人しか持ち合わせていない能力(老人力)を見つけ、それを仕事化していかなくてはならない。
さて。老人しか持ち合わせていない能力(老人力)とは、一体何なのだろう?体力が落ちていく中、記憶力が落ちていく中、歳を重ねることで、衰えるのではなく、成長している部分は一体どこなのだろう?そんなことを考えている時に、面白い店に出会った。
それは沖縄の居酒屋さん。
80歳近いお爺ちゃんが1人で店を切り盛りしている。
カウンターで呑む僕の接客をしながら、一緒に呑み、笑ったり、泣いたりしてくれる…と、ここまでなら、どこにでもあるような店だが、この店のスゴイところは、ここからだ。
なんと店主が誰よりも先に酔い潰れるのである。
目の前で80歳のお爺ちゃんがグースカ眠っている。
仕方がないので、座敷に運び、座布団を二つ折りにして枕を作り、寝かせてあげることにした。
それから1人で呑んでいたら、客Aがやってきた。「店主が寝ちゃったから」と言って客Aを帰してしまうと、この店が潰れてしまう。
仕方がないので客Aを座らせ、その辺にあった「突き出し」を出す。
ドリンクの注文をとりビールを頼まれたが、ビールサーバーが空だ。仕方がないので、近所のコンビニまで走り、缶ビールを買ってきて「これでいいっすか?」とお出しした。
客として来たのにどうやら働くことになってしまっている僕を指して「あらあら大変ねえ」と言っていた客Aであったが、客Aが客でいられたのも束の間。
まもなく新しい客Bがやってきて、今度は客Aが客Bの接客をすることとなる。
「このポンコツ店主め」と言いながら、客Aが客Bの接客をし、客Bが客Cの接客をする。
店主である「お爺ちゃん」が頼りないばっかりに、ペイ・フォワード(恩送り)が自然発生したのだ。
これが20代や30代の店主なら、そうはいかない。
「しっかりしろよ」と叩き起こされて終わりだ。
完璧を求められるロボットなら尚のこと、「故障したのか?」とバンバン叩かれ、苛立たれて終わる。
ここに人間が歳を重ねることで得ることができる能力を見つけた。
『愛される欠陥』である。
『許され力』と呼んでもいいかもしれない。
これは人間しか持ち合わせることができない能力で、年齢に比例しどんどん成長していく。
20代よりも80代の方が『愛される欠陥(許され力)』の能力値が高いのだ。
この『愛される欠陥(許され力)』を仕事化することができれば、歳を重ねることをポジティブに捉えることができるし、その仕事はロボットに代替されることはない。「年寄りはイイよなぁ」となる。沖縄で見つけた「眠る居酒屋」は、店主の『愛される欠陥(許され力)』によって店が回っていた。
そういった仕事を僕らは作っていかなければならない。
(『革命のファンファーレ』西野亮廣著 幻冬舎発行 より引用しました。)


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Posted by 守綱寺 at 15:39│Comments(0)本堂に座って
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