2023年02月20日

本堂に座って 2023年1月

本堂に座って 2023年1月

 トイレ改修のために移動させていた本を片付けていたところ、河合隼雄さんの『こころの子育て〔誕生から思春期までの48章〕』という本が目に入りました。どの文章からも教えられることばかりですが、その中から一つを紹介します。

 Q.子どもがしていることがどうしても受け容れられません。
 A.そういう状況を、親も一緒になって作ってきたわけです。

 親がほんとに嫌っていることを子どもが好きになった場合は、親はものすごく考える必要があります。それ、ほんとに好きかって、絶対聞いてみる必要があります。
 高校生や中学生とのカウンセリングのときは、ぼくはほとんど好きなことの話から入ります。「パチンコが好きや」と言ったら、「ああ、そうか。どこがおもしろい?」とか、「なんでそんなにおもろいんや」とか聞いていると、「実は、あんまり好きではありません」なんて言いだす。
 ある大学生は「ぼくは楽しみのためにパチンコに行ってるんじゃなくて、パチンコを苦しみに行っているような気がする」と言いました。嫌なのにやめられない、と。そして「やめたら家に帰らないかん。それがかなわん。先生、パチンコへ行って、ほんとにパチンコを楽しんでいる人は、これはもう相当な人ですよ」。ほとんどは苦しみに行っている、って言うんです。「同じ苦しむんやったら、もうちょっと上手に苦しんだらどう?」「そうですねえ」。そんなふうになってきたら、話が変わってくる。こういうとき、どうしても「そんなんしたらダメやないか」と外側に立って物をを言いたくなる。そうではなくて「パチンコってそんなにおもろいんやろうか」って言ったら、スッと相手の気持ちの中に入るでしょ。それだけわかってくれるなら、もう少し話してもいい、自分の中の話をしてもいい、ってことになります。今まで蓋をしてたものが、一挙に外に出てくる。この大学生の場合は、自分が母親と対決することを避けるために、家に帰らないでパチンコをしていることに気づいていきます。そしてついにパチンコをやめて母親と正面から対決していくんです。
 しかし考えてみたら、子どもがそこまでパチンコにのめり込まざるを得ない状況を、親も一緒になって作ってきたわけです。だから、親が容認できないことを子どもがするときは、親は考える必要があります。ところがだいたいそういうとき、みんな自分のことは棚に上げて「変な子どもになってしまった」とか「おれの子どもにしてはどうも」とか言ってます。でも「おれの子どもだから」そうなったんです。
 子どもの話を聞くときに、共感するのが大事だとわかっていても、たとえばぼくらにしても、「パチンコが好きや」と聞いた途端にパチンコのおもしろさがわかることはまずないです。だから相手のこころの側へ沿っていって話を聞いていくんです。わからないのに、わかったように「うん、わかるわかる、お父さんが憎いやろね」なんてカウンセラーが聞いていたら、子どもは「お父さんを殺します」というところまで行ってしまう。それは「父親を殺す」ということでしか表現できないところへ、カウンセラーが追い込んでいるんです。「わかるわかる」と口では言ってるけど、ほんとはわかっていないことが子どもに伝わってるから、子どもはもっと激しい表現をしてくるんです。それを距離にたとえて言うと、遠いところにいる人に言おうと思ったら、怒鳴るよりしょうがないですね。近くにいる人だったら小さい声で言えるけど、遠かったらワーッと大声を出さなければならない。それと同じことで、物わかりの悪いやつには「親父を殺す」とまで言わないとわかってもらえない。そういう表現でしか通じないからそこまで言うんです。それは親子でも同じです。親が気がつかなければ、子どもはどんどん激しいことをやってきます。そういうときは、親は自分自身についてよく考えないといけない。実際、盗みをした子が言ったことがありますよ。「せっかく盗みまでしたのに、親はまだわかってない」って。
(『こころの子育て』河合隼雄 著 朝日新聞出版発行より引用しました)



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Posted by 守綱寺 at 16:46│Comments(0)本堂に座って
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