2022年06月01日
今日も快晴!? 2022年5月
愛用している生活クラブの本の紹介欄にあった『海をあげる』(上間陽子著)を購入して読みました。
2021年の本屋大賞ノンフィクション本大賞を受賞した作品です。
沖縄、基地、戦争、軍隊、貧困、女性への暴力等々…描かれている問題は、どれも切実で気が重くなるような内容です。
それらは、うっすら(ここに問題がある)と知りながら見ない様にしてきた問題だったように思います。
これは読むべき本でありこの本に出会えて良かったと思えました。
筆者の受賞記念スピーチも、穏やかな語り口からは想像も出来ない力を持った内容でした。
「…沖縄という場所は、本当に悩ましい場所だと思います。美しくて、ゆったりした場所でありながら、長く日本のひとつとして認められず、日本が繁栄しつつある時間、アメリカ軍に占領され続けました。
その頃に沖縄で起きた事件を見ると、沖縄で生活する多くの人が基地との関わりを持ち、性暴力の被害や米軍からの暴力に怯え、法的な措置もほとんどとられないなかで暮らしてきたことがわかります。
その頃に沖縄で起きた事件の数々は「凄惨な」としか言えないもので、そういう事件が山のようにあります。
その後、粘り強い交渉によって無事に復帰は果たせたものの、戦後の日本の繁栄を一切受けることができなかった沖縄の自治体の基盤は脆弱で、その後も沖縄は国内有数の貧困地域であり続け、今もまだ軍隊と暮らす場所固有の問題が残存しています。
普天間基地は世界有数の危険な基地ということで、今度は沖縄の辺野古という海に米軍基地を作ると言っています。
辺野古には巨大なサンゴ礁があり、ウミガメが泳ぐ海です。
その下にはマヨネーズ状の柔らかい土壌があり、そこに海上基地はできないことはすでにわかっています。
それでも毎日税金が投入されて、土砂が投入されて、工事が淀みなく進んでいます。
…(略)…私が今暮らしている場所には軍人はいません。
それでも、過去に5歳の女の子が連れ去られてレイプされて殺された事件や、12歳の女の子が集団レイプされた事件や、20歳の女性がウォーキングの途中で連れ去られて殺されて軍事演習をしている山に捨てられたこと。
これらはすべて私には具体的な脅威です。
…(略)…小さな娘のそばで沖縄を生きる痛みを、どのようにしたら本土の、東京の人たちに伝えることができるのか。
本をまとめるとき、私はその一点だけを考えました。ただ同時に、本土の人、東京の人もまた、痛みを感じながら生きていないわけではないと思います。
…(略)…地図で探すことが難しいくらいの小さな島(沖縄)に、日本が見たくない、考えたくないものが押しやられていると思うからです。
それは、沖縄に住む私たちが望んだものでも、東京や本土に住む人々が望んだものでもないのだと思います。
そういった意味で、『海をあげる』はパンドラの箱でもありました。
この『海をあげる』という本は、何よりも(辺野古を描く)「アリエルの王国」という章のために書かれた本だと言えます。
…(略)…生活のあり方の延長線上に、私たちが周りの人にどんなに心を砕いてもどうにもならない地平が、政治によって権力によって現れてしまうのだ、ということを書きたいと思いました。
この本には「アリエルの王国」を、目の前のあなたの問題だと読んでもらうためのたくさんの仕掛けがあります。」
「辺野古の問題は、目の前のあなたの問題だ」。上間さんの言葉は、重く心に響きました。
Posted by 守綱寺 at 17:17│Comments(0)
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