2023年12月26日
今日も快晴!? 2023年12月
今月、豊田市の参合館(市立図書館)で、たまたま手にした本『悲しみとともにどう生きるか』(集英社新書)が、とても心に響きました。
参合館で作家の平野啓一郎さんの講演会があり、平野さん関連図書コーナーが設けられていたので、(報恩講と重なっていて講演会には行けないから、せめて本だけでも読んでみよう)と、たまたま手にした本でした。
この本は、2000年に東京世田谷で一家4人が殺害された「世田谷事件」で妹家族を失った入江杏さんという方が、悲しみについて思いを馳せる会「ミシュカの森」を主催されていて、そこに講演に来られた方々の中から、6名の方の講演や寄稿して貰った文章を収録した本です。
平野さんも、演者の一人でした。どの方の文章も素晴らしく、今の関心事の一つである「悲しみを背負った方と、どう共に生きれば良いのか」という問いに、ヒントを貰えたような気がしました。
講演された方の一人、ノンフィクション作家の柳田邦男さんの文章を紹介します。
例えば、1997年春に神戸で起きた少年A事件で、幼い彩花ちゃんを喪ったお母さんの山下京子さんは、外にも出られないような辛い日々を送っていました。
秋が来て、久しぶりに自治会の集まりに出ました。
家に帰る途中、何か声が聞こえたので、思わず空を見上げると、まるい月が見下ろしている。見つめているうちに、月が彩花ちゃんの顔のように見えてきて、彩花ちゃんの声が心に響いてきたというのです。
「お母さん、私は大丈夫。だからもう人を憎まんでええんよ」と。驚いた山下さんは、家に飛び込んで、ご主人に「写真を撮って」と頼んだそうです。
…(普通のカメラだから真っ暗な写真が多い中)一枚だけ、煌々と黄金色に輝いた月がハートか胎児のような形に写っていたそうです。
山下さんは、天の彩花ちゃんに会えたことで、憎しみと恨みの感情ばかりの中から抜け出して、少しずつ温かい心を取り戻して生き直すことが出来るようになったというのです。
この話は科学者が聞いたら「それは幻覚に過ぎません」と言うでしょう。
…人間が生きる上でそういう経験があると、それをきっかけに人生が変わってゆく。
自分が消滅したような感覚でいたところから、生きるのを支えて貰っているという感覚が全身に染み渡り始める。
そういう切り替えの瞬間があるのです。…人は亡くなっても魂は亡くならない。
…精神性のいのちは、肉体が消滅しても消えないで、人生を共有した人の心の中で生き続ける。
それゆえに亡くなったあとも、残された人に、生き直す力を与えてくれたり、心豊かに生きる生き方を気づかせてくれたりするのだと思います。
…人は一人では生きられないといわれます。辛いことを経験した人も、人とのつながりを持つことで、生きていく力を取り戻すことが出来る。』
昨年の報恩講のご法話で、高柳先生が「亡くなった子どもを「可哀相な子や」と思っているうちは、本当にその子と出遇うことが出来ない」と話されていたことと重なるなと思えました。
入江さんの「悲しみから目をそむけようとする社会は、実は生きることを大切にしていない社会なのではないか」という言葉も、本当にそうだと思えます。
Posted by 守綱寺 at 17:26│Comments(0)
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