2018年08月02日

本堂に座って 2018年7月



先日、次男を誘って三谷宏治さんの講演を聴きに出かけました。
講演では、子どもたちに「AI」に負けない人に育ってもらうには、親としてどう関わっていけばよいか…を教えていただきました。
でも三谷さんのお話には「学力をつける」とか「能力を磨く」「こんな習い事がよい」といったことは出てきません。
三谷さんが新しく出される書籍から、お話の内容を振り返ってみます。

これからのAI・ロボット時代に求められるものは新しい何かを生むための試行錯誤力です。
逆にそれさえ十分なら、将来の心配は要りません。そしてそれは、「発想力」「決める力」「生きる力」の組み合わせに他なりません。
だから子どもたちのこの3つの力を、家庭という場で鍛えることが、この本の目的なのです。

<決める力の鍛え方>
会社でも家庭でも、若者や子どもたちの「決める力」を奪う方向にばかり進んでいます。
相談しに来る子はかわいいので、親は必ずアドバイスという名の答えを与えます。
どんな考えを持っていっても、必ずよりよい「アドバイス」を示されるので、子どもはそのうち、面倒になって自分で考えることを止めてしまいます。
与えるべきものは答えではなく、考え方であり調べ方です。
意志決定のための方法をこそ伝えましょう。
そして決めることは、ちょっと怖いことでもあります。
そうだよね~と言っていれば必ず多数派になれるのに、Aと決めればBじゃないんだと人にばれ、かつ少数派になってしまうかもしれないからです。
たとえそれで少数派に落ちようが、もしくはB派に恨まれようが、自分はAなのだと主張する強さが必要なのです。
子どもたちにその覚悟を持たせるために、親にできることはその意思決定力を、常に全力で支持すること以外にありません。

<発想力の守り方>
家庭こそは、子どもたちの発想力を鍛える原点です。
そもそも子どもたちは発想力の宝庫で、創造性に満ちていますが、学校や家庭、地域の中でその力をどんどん奪われています。
発想力や創造性を発揮する場も鍛える場もないのです。
例えば、砂場とジャングルジム、その共通点は「自由度の高い遊び場である」ことと「最近、数が減ってきている」ということです。
自由度の高い遊びの場がどんどんなくなっています。
そういった状況を作っているのは他ならぬ親自身です。
子どもたちの発想力を上げようと本当に思うのなら、変わらなくてはいけないのは親自身なのです。
子どもたちを無闇に保護し、習いごとに追い立て、定型の遊びばかり与えていては、子どもたちの心は決して発想や創造には向かいません。
皆と同じじゃないと日本人は不安になります。
でもそれは遺伝でも何でもなく、育てられた性格です。
頑張って逆転させましょう。
皆と同じだと不安、という感覚こそが発想力の根源なのです。

<生きる力の育み方>
過保護も過干渉も、「子どもを守りたい」という目的は同じです。
その「親が(今の子どもを)守ってあげよう」という気持ちや行動が、子どもの未来を壊します。
親の過保護・過干渉によって、子どもたちから奪ってしまっている能力や姿勢は膨大です。
自己判断力、主体性、発想力、意欲、コミュニケーション力、などなど。
中でも主体性・意欲は「生きる力」の根幹といえるでしょう。
過干渉とはつまり、子どもに対する過剰なヘルプ(直接的な助力)であり、「答え的なアドバイス」はそのひとつです。
自分で決めた(と思う)ことならば、成功したとき「自信」に、失敗したとき「前向きな反省」につながるでしょう。
でも親(や教師や塾)が決めたことで失敗したら、それは親への非難やそれに従った自分への後悔にしかつながりません。
ヘルプでなくサポート役に徹しましょう。
何かを代わりにやってあげるのではなく、やり方を伝えるのです。
ただし、サポート役に徹するとは相手の失敗を甘受するということです。
その覚悟が親には必要です。
親が不完全だなんて、子どもは知っています。
でもそれを認め、どうにかしようと努力している、その後ろ姿こそが子どもにとって何よりの叱咤激励になるでしょう。
(『戦略子育て 楽しく未来を生き抜く「3つの力」の伸ばし方』三谷宏治著 東洋経済新報社発行より引用しました。)

本ではこの後、より具体的な内容で3つの力の伸ばし方が語られていきます。
とても読みやすく、すぐに実践できることばかりなので、ぜひ読んでみてください。
  

Posted by 守綱寺 at 20:00Comments(0)本堂に座って