2022年10月11日

清風 2022年9月

清風 2022年9月

人間の本質はGDPによって計りうるものではない。
われわれは「学びの社会」の時代に入ったということをしばしば耳にする。
これは確かに、真実であることを希望しよう。
それでも、われわれ人間仲間とだけでなく、自然とも、いかにして調和して生きるか。
結局、自然を作り人間を作ったより高次元のちからと平和裏に生きることを学ばねばならない。
何故なら、われわれは偶然に生まれたのでもなく、自分で自分を作ったものでもないことは確かだからである。
『人間復興の経済』シュマッハー(1911~1977)著 
1976年 佑学社刊(P14~15)より


成熟社会とは、これまでの経済成長一辺倒に代わる社会です。
それは、経済力・軍事力に代わり、例えば現行「日本国憲法」の第九条が国の目標に置かれること。
「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意した」(「日本国憲法」前文)と、日本国民が世界と約束した責務とでも言えるでしょうか。

昔の中国の皇帝は、画家や陶芸家の品等を、専門のスタッフと相談して決めたらしい。で、その一等を“一品”といった。
天下一品なんていう、あの一品ですね。
で、以下、二等・三等…ではなく、二品・三品…という呼び方で格付けしたそうです。
が、中国の面白いところは、その審査のモノサシで測れないが、個性的ですぐれていると思われるものは、「絶品」とか「別品」として認めた、というんですね。
その時の久野 収先生(哲学者)によると、
「別品(別嬪)といったら、いまでは美人のことを指しますが、もともとはちょっと違うようですね。
だいたいあれは、関西からでてきた言葉でしょう。
関西では、芸者とか御料人さんとか、正統派の美女に対して、ちょっと別の、声がハスキーだとか、ファニーフェイスだとか、そういう美女を別嬪と呼んだわけですね。
ところが、いまは俗流化して、別嬪というと美女のことになってしまった。
ぼくが言いたいのは、別品とか逸品とか絶品というのは、非主流ではあるけれど、時を経ると、どちらが一位であるかわからないような状況の生じる可能性があるということなんですね。」
『成長から成熟へ-さよなら経済大国』天野祐吉(1933~2013)集英社新書(P211~212)

この文章を読みながら、経済力・軍事力、つまり富国強兵という国家を考える場合の基準として、GNPとか、その国家について軍事力で守るという、どう考えても経済成長のみ、つまり物質的な富の拡大あるいは功利的な損得のみに意識を集中させてきたことが思われます。
その結果、経済成長という数値のみが国の指標として掲げられることとなり、「経済成長」が人のための成長であったものが、今では成長のために人が使われるという倒錯した状況になってしまいました。
(例:コロナ禍で人流の抑制をするか、しないか…など)

ここで、清風2022年3月号の巻頭の言葉「財力、容姿、地位、学歴、健康などは全て、人生をかたちづくる素材にすぎない」を思い起こしてください。
人生にはさまざまな出遇いがあります。
その出遇いは、私の思いを超えています。
つまり向こうから私のところへやって来るものです。
仏教では、その出遇いのことを「縁」と教えられてきました。出遇いによって私は育てられるのですよ、と。
その出遇いに、私はどう育てられてきたのでしょうか。
「素材にすぎない」…GNPとは、その素材であるということです。
「成長から成熟へ」と言われる、その成熟とはどういうことでしょうか。

先に紹介した『成長から成熟へ』という本の結論に、天野祐吉さんは次のように記されています。

いいなあ。
経済力にせよ軍事力にせよ、日本は一位とか二位とかを争う野暮な国じゃなくていい。
別品の国でありたいと思うのです。

そして釈尊は、「あなたは、誰とも比べる必要がない」、つまり「別品」であると仰っています。

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Posted by 守綱寺 at 14:29│Comments(0)清風
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